★ 秘密の報告部屋

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『はい、そういう見方が主流です。  理由は、バタフライを使用した人間の数が圧倒的に少ない事。  更に、いくら攻撃的だったとはいえ、薬物使用者はランナーでしたからね。  被害は殆んどなかったと言えますから……』  唯一の被害者の泉が、苦々しく説明した。 『そこなんだよ。これは、俺の考えだけど。  ロバートはわざと警察官、しかも陸上部を狙ったんじゃねぇかな?』 『はぁ? 何のためにですか?』  俺は思わず、口を挟んだ。  わざと陸上部を狙っただなんて、冗談じゃない! 『だってよ、『速やかに事件を闇に葬る』は警察組織の十八番だろう?  例え警察官が問題を起こしても、それを表に出さずに処理できる組織だってことは、ロバートじゃなくたって知ってるよなぁ。  しかも、東京有明マラソンという日本中が注目するイベントで、ラリった警察官がランナーに交じってるんだぞ? これほどのアピールがあるかよ? くくくっ』 『だからって……』  俺の小さな反抗心は、しなしなと萎んでいった。 『日本国民の安全が脅かされることなく、効率的なやり方で『従順な兵士』を作って見せた。そういうことですか?』  泉は横目で同情的な眼差しを俺に送りながら、谷木さんへと詰問する。
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