★ 秘密の報告部屋

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★★★ 「谷木さん、俺たちはこれからどうしたらいいんでしょう?」  俺が途方に暮れて話しかけると、谷木さんは投げやりな動作で会議机に座り、視線を彷徨わせた。  静かになった資料室の中。奥に設置されているコンピューターのモニター音だけが、部屋に響く。  腕時計で確認すると、もうそろそろ日付が変わる。  今日は解散かな……。そう思って、席を立った時だった。 「なあ、柏木」  谷木さんに呼ばれ、俺は振り向いた。  けれど、呼びかけた谷木さんは窓の方を向いている。  窓のブラインドは下ろされていないから、谷木さんの姿が(しつ)の悪い鏡のように映っている。視線の先は判別できない。とりわけ、景色を眺めているようには見えないけれど…… 「なんですか……?」 「ん……。  俺たちの当初の目的ってさぁ、宝田光を餌にロバート松岡をおびき出して、まんまと捕まえよう、だったよなぁ?」  俺が返事を返しても谷木さんは窓に向かったまま、脱力したような声で俺に問う。 「はい。そうでしたね。真田が計画したものに、便乗するような形で……」 「そこだよなぁ~」  谷木さんは少しだけ悔しそうな声をあげた。そして振り向いて俺を見た。
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