★ 面晤《めんご》

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★★ 7月6日 AM9:00 ★★ 「おはようございます」  俺は前回同様グレーのスーツを着込んで、ワンルームマンションに入った。  ここは、真田を見張るために公安で用意した例の部屋だ。 「よう! おはよーさん」  前回同様、佐藤さんがモニターを眺めながら、手を上げて挨拶を返してくれた。 「お疲れ様です。どうです? 様子は」 「特に変化はねぇな……。例のチャットルーム、真田にハメられたんだって?  すっかりやられたよなぁ~。  谷木さんが珍しく本気で悔しがっていたぞ」 「谷木さん、ここに来たんですか?」 「あぁ、昨夜な。ちょっと打ち合わせで……。えっと……今日は11時だっけか?」  佐藤さんが少し硬い顔で、首元に手をやる。  もしかして……、緊張してるのか? 「はい。11時に訪問することになっています……」  俺も少し硬い声で返事を返し 「あ! そうだ。弁当買ってきましたよ。今日はカレイのフライ弁当だそうです」  持っていたビニール袋を掲げると、佐藤さんに爽やかな笑顔が戻った。 「サンキュー。じゃあ、ちょっと、そこ頼むな」  それから前回同様、颯爽とバスルームに消えた。    俺はさきほど佐藤さんが座っていた椅子に座り、モニターを眺めた。  モニター内では、真田が部屋中掃除機をかけている。  なんだ? ずいぶんと気合が入っているんだな……。
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