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「ところで、本題なんだけど……」
私はここで、言葉を切った。
この後の言葉を言うのには、少し勇気が必要だったから。
「……、光が小枝子さんから、取り上げたノート、泉さんが持ってるのよね?」
私が断言してそう質問すると、泉さんはプツンと黙った。
お互い沈黙が続いたけれど
『…はい。正確に言えば、持っていた、ですが……』
ようやく、観念したように苦々しく途切れながらの返事。
「どういうこと?
光は『ノートは風に飛ばされて海に落ちたらしい』なんて言ってたけど、泉さんがそんなことするわけがないでしょう?
ノート、今はどこにあるの?」
私が詰め寄ると、電話の向こうで小さく息を吐く様子が伝わる。
『光さんからは……?』
「育児日記だった。という事は、聞いているわ。
でも、内容については、あえて聞かなかったの。
どうせ、とんでもない内容なんでしょ?
光の口から言わせるつもりなんて、なかったから」
私のこの発言に、遠慮のない大きなため息が耳に刺さる。
そして、一気に声が硬くなった。
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