★ 面晤《めんご》

7/25
前へ
/408ページ
次へ
「ようこそ! さあ、こちらへ!」  真田のはしゃいだ声が聞こえる。  この声、明子さんが聞いたら目を丸くするだろうなぁ。  ゼミ室で会った時の真田とはまるで別人だ。  なんだ? この豹変ぶりは?  祖父母の家に遊びに行った時の、おばあちゃんみたいだ。  真田を先頭に泉、宝田さんがリビングに入り、泉たちは手前のソファに座った。  二人の前にはローテーブルがあり、真田は対面に座る。  この構図だと、モニターには真田が映され、泉と宝田さんは後姿になる。  一度腰を落ち着けた真田だったが、そわそわと落ち着かず立ちあがった。  そして、台所へ向かう。  その際「紅茶でいいだろうか? それともコーヒーの方が良いかな?」という弾んだ声がヘッドフォンに響いた。  宝田さんが硬い声で「おかまいなく……」と答えている。 「そう言わないでくれ。今日のために、とっておきの紅茶を手に入れたんだよ。君の口に合うといいんだが……」  という優しそうな声が小さく聞こえる。台所から話しかけているようだ。 「なんだか、浮かれてるな。真田って、こういうキャラなのか?」  佐藤さんがモニターを覗いたまま俺に問うんだけど、俺も唖然としてその様子を見ていた。  「いや、こういう意味で、変態じみているキャラではなかったはずです……」  俺は思わず本音を漏らした。
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加