★ 面晤《めんご》

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「えっ~!? どこ? どこにいますか?」  俺はモニターに齧りついて隅々に目を走らせた。 「たぶん、台所だ。ほら、あの台所って対面式だろ?  カウンターの向こう側は死角になってるんだよ。  で、たぶん、その向こうから隣の部屋に行き来できるんだろう」 「なるほど……。カメラはリビングと廊下しか映しませんもんね……、って。  えっー!?  ということは……。真田はカメラの存在に気づいていたんですか?」 「あぁ。たぶんな……」  佐藤さんが悔しそうに呟いた時、いよいよ、台所から人影が現れた。  あれか?  真田よりも一回り程大きそうな男だ。  後ろのパソコンラックの高さと比べると、190センチくらいありそうだ。  ゆっくり歩く姿は、決して大ぶりなわけでもないのに、全てのパーツが大きく見える。  男は真田の座っているソファの後ろで、立ち止まった。  佐藤さんがパソコンを操作して、モニター画面の倍率をあげる。  そして、スクリーンショットで顔写真を撮った。  一瞬鋭い双眸がこちらを睨んだような気がして、俺はドキリとした。  瞳の色はアジア人を思わせる漆黒。鼻梁も唇もナイフで削ったように硬そうに見える。  全体的に髪はやや長めで、耳にかかっている。   着ているシャツがゆったりしているから、見ようによっては“休日のお父さん”スタイルなんだけど。いかんせん表情がないから、まるで石造だ。  ヘッドフォンからは、何の音も聞こえない。  きっと、誰も何も言葉を発していないんだ……。  きっと目の前に立たれたら、俺も言葉を失くす。  そのくらい、その男は周りを圧倒するオーラを発していた。
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