★ 面晤《めんご》

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「おい、なんだその手は!? 彼女から離れろ!」  突然、真田が大声をあげて立ちあがった。  えっ? この場面で、それ?   ちょっとー、今、感動の場面だったよな? 「さなだぁ~、空気読めよ~」  佐藤さんが野次った。   そうだ、そうだ。俺もそんな気分だ。  真田の剣幕に触発されて、止せばいいのに泉は更に宝田さんを引き寄せた。 「光さんは、私の恋人だ! お前にとやかく言われる筋合いはない」 「何? お前は警察の人間じゃないのか?」 「そうだ、警察の人間だ。と同時に、恋人でもある!」  見せつけるように、宝田さんを両手で抱きしめている。  真田は顔を真っ赤にして、ブルブル震えだした。 「ぼ、ぼ、ぼくはっ! セイコに恋人がいるなんて認めないぞ!」 「セイコじゃない、光さんだ! この変態野郎!   さっきから、光さんをスケベな目でジロジロ見やがって。  光さんをジロジロ見ていいのは、この私だけだっ!」  泉が応酬した。   いや、泉、それ。……小学生の喧嘩みたいになってないか?  当の宝田さんは、何の音声も拾えないし顔も見えない。  まあたぶんだけど……、またスイッチが入ったみたいに赤くなってるんじゃないかなぁ……  その証拠に。さっきまで、あんなに神妙な顔をしていたロバートが、何だかすごーく困った顔になってるぞ。
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