★ 面晤《めんご》

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 ロバートは宝田さんをじっと見詰めているのだろう。 「し、信じます……」  宝田さんの声がしたところで、一文字になった口元を緩ませて「ありがとう」と唇だけで伝えた。そして続きを語った。 「彼を調べているうちに、君があの特殊なTシャツをマラソン大会で着ることを知った。それで、俺もそのTシャツを買ったんだ。なぜなら、あの――眼鏡を手に入れたかったから。眼鏡の別売りはしていなかったんだ……」  シーン……  なあ、これ、どうリアクションしたらいいんだ?  俺モニターの前で良かったぁ。あの中にいたら、居たたまれなかったなぁ……  ロバートって……、、、、 「あー、それで? 一応訊くけど、なんであのTシャツを使ったんだ?」  この沈黙を破るべく、谷木さんが呆れた声を上げた。 「試したんだ。BHで。実は、一人だけ女性メンバーがいてね。  どんな風に見えるのか知りたかった。  驚いたよ。付属の眼鏡をかけて見ると、本当に花が浮き出て見えて……。  君が着ているところを、すぐにでも見たくなってしまったよ」  ロバートは場違いなくらい嬉しそうな顔をした。  ついでに、あっさり『BH』とかって言っちゃったけど……いいのか?  なんだろうなぁ。国際指名手配・ロバート松岡も、こうなっちゃうと人の親なんだなぁ。  俺はなんとなく、ジーンとしてしまった。
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