★ 面晤《めんご》

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「それで? 続きをどうぞ」  泉が硬い声で先を促す。 「あぁ。すまん……。  それで、メンバーに勘繰られてしまったんだ。この特殊なTシャツをどうするつもりか、と。それで、俺は咄嗟に【バタフライ】を思いついた。  君が後方からスタートすることはわかっていたから、準エリート選手をバイヤーにする。そして客は警察陸上部、というシナリオをその場で告げた。  しかしこれで俺は、任務とはいえテロリストの仲間になるわけだから、いつ死んでもおかしくない……。  最期に美しく走っている君の姿を、見つけたかった。  こんな勝手な、――お、俺を許してくれるかい?」  ロバートは目元を手の平で覆うった。  俺は思わず、もらい泣きしそうになった……。  なんだよ。健気じゃねぇかぁ。ロバ―トォーーー。 「グズッ」  鼻をすする音が聞こえる。  泉の体が横を向いているところをみると、宝田さんが泣いているのかもしれない。  そうだよな、親子だもんな。  俺も我慢できずに、少しだけ涙がにじんでしまった。
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