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私と泉さんは黙って駅までの道を歩いていた。
あれから、音無さんに何度も『どういう意味だ?』『何を知ってる?』と詰め寄ったけれど、音無さんは『書類が公開されるまでは、俺の口から言う事は出来ない』と断固として、その秘密を打ち明けることはなかった。
弁護士なんだから当たり前なんだけど……。
私たちの、この煮え切れない気持ちをどうしたらいいのか……、途方に暮れてしまった。
チラッと泉さんを盗み見ると、剣呑な顔で前だけを見つめて歩いている。
犯人を取り逃がした刑事の顔なの、それ? って突っ込みたくなるんですけど……。
「泉さん」
呼びかけると、泉さんは眉間にしわを寄せた顔で、振り向いた。
「顔、怖いから。まずそれ、どうにかして!」
はっきり言ってやると、ハッとした様子になって「すみません……」と腰を折る。
で、今度は悲愴顔。
こっちの方がまだマシ……?
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