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「先生、最近調子がいいのよ。もう薬を飲まなくてもいいかしら?」
「そうだね……。量を減らして様子を見よう。どうかな? もう怖い夢は見ない?」
芳樹医師は穏やかに質問する。
そして私はそれに答えつつ、日常の話を聞いてもらう。
そうして毎回30分ほどでカウンセリングは終了する。
「それじゃあ、何か心配事があったら連絡してください。
カウンセリングは来月も同じ時間でいいかな?」
「はい、大丈夫です。先生、ありがとうございました」
私が画面に向かって、ぺこりとお辞儀をすると、芳樹医師は目を細めて口を開いた。
「中山さん、あれから随分頑張ったね。君の勇気と、君のお母さんの愛が君を回復させているんだね」
「そうですね。母親には感謝しています。――日々、愛を感じてますよ」
私がおどけてそう言うと、医師は少しだけ悲しそうな顔をした。
「中山さん、君には言っていなかったことがあるんだ。
涼のことなんだけどね、話してもいいだろうか?」
芳樹医師の表情は、もう医師の顔ではなかった。
私は少し緊張しつつも、頷いて了承した。
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