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「あの事件の直前、涼はね、聞かれていたんだよ。
白人グループに『ここら辺でイスラム人がやっている店はないか?』ってね。
そして涼はモハメド君のお店を彼らに教えてしまったんだ」
「――そんな。じゃあ……」
画面に映る芳樹医師は俯いていた。
小さく肩が震えている。それでも言葉を絞り出そうとするためか、医師は無理矢理顔を上げた。
「涼は、知らなかったんだ。彼らがこれから何をしようとしているのか、本当に知らなかったんだ。それは……、信じて欲しい……」
「……」
私は目を閉じた。
「涼はね……、あの事件の後、毎夜うなされていた。
自分のせいで事件が起きてしまった、と……。
私はそんな涼を見ている事しかできなかった。
できることといえば、毎夜毎夜、安定剤を与えることくらいだった。
そんな時、君のお母さんから相談を受けたんだ。
そして、君を見て涼にも同じ治療をしたんだよ。
君と同じ様に……、記憶を、操作したんだ……」
懺悔だ。そう思った。
芳樹医師は、今私に向かって懺悔している。
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