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どのくらい、私達は無言でいただろうか。
私がゆっくり目を開けると、画面の中の医師は未だ項垂れていた。
「せん、せい……? それで……、リョウは、どうしたんですか?」
私がやっと言葉を紡ぐと、医師もようやく顔を上げた。
「忘れたよ。悪夢をね……。全て取り除いたんだ。
しかし去年の夏、涼は君のカルテを……見てしまったんだ。
それで記憶が混乱してしまった。
何が切っ掛けだったかは、今でもわからない。
ただ、涼は急に日本へ行ったんだ。君に会うために……。
そして、あの事件を起こした。
裁判の時も実は錯乱していてね。安定剤を投与した後だったんだ」
私は裁判の時のリョウの様子を思い出した。
あの時のリョウは、何の感情も見えない、ただの人形だった。
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