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「リョーォォォ!! ああああ!!」
「あきこっ! あきこっ!」
肩をゆすられ、ハッ! っと目を開けると、母親の必死な顔が間近にあった。
「薬……、飲んで……」
渡された薬を何も考えずに飲み込む。
まだ息が切れていた。
心臓のバクバクも止まらない。
「明子……。大丈夫よ。大丈夫……」
汗でびっしょりと濡れた前髪を、忙しなくかき上げる母親にしがみついた。
「ママ、ママ、――リョウが……、リョウがいたの……」
「うん、うん……」
母親の胸の中は温かかった。
この温かな腕の中にいる限り、誰も私を傷つけたりしない。
少しずつ、少しずつ……力が抜けてきた。
ここは安全な場所だ。この人は私を愛している。
大丈夫だ。――大丈夫なんだ……。
私はいつの間にか、眠りの世界に落ちていたらしい。
朝起きる直前に見た夢は、リョウの姿をした人形を抱きしめ、何度も語りかけていた。
『大丈夫、一人じゃないよ……』
人形は何も反応しない。
それでも、私は諦めず、何度も何度もそう繰り返した。
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