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「それで……、日記、なんだけどね…」
光は青白い顔をして、痛そうに口を開く。
だから私は、すかさず質問した。
「その日記、今どこにあるの?」
「えっ? あぁ、なんか、海に落ちちゃったらしくて……」
「はぁ? なんでまた? 投げ入れたわけ?」
「そ、そんなことしないよ! 風に飛ばされて落ちた、って泉さんが…」
「へぇ……。まあ、海に落としちゃったなら仕方ないわね。
お姉さんには『返せません』って言わなきゃね」
私がそう言うと、光は「あっ!」と声をあげて、目を見開いた。
「そうだった……。小枝ちゃんに『返して』って言われたのに……」
「まあ、今度音無さんに会った時にでも、言っておけばいいんじゃない?」
私の提案に、光は頼りなさげに小さく頷いた。
そして「うん、音無さんとも話をしなきゃいけない」と独りごちて、私に顔を向けると、改まって姿勢を正した。
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