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対面形式で置かれた会議机にむかい合わせで座り、お互いの情報を交換する。
東京有明マラソンで初めて明らかになった『バタフライ』という名の麻薬を巡り、我々は情報を交換して来た。
とはいえ、警察と公安の溝は深く、無難な情報を小出しにしながら、相手の情報の内情を探っているという状態。
ところがここに来て、新たな局面を迎えた。
それは『宝田光』という名前が浮上してきたからだ。
真田の息がかかった狭山が光さんを連れ去り、軟禁したこと。
狭山が単独で起こした事件なら、問題ない。けれど、その裏に真田の指示があったとしたら、光さんが事件に関わっていることを意味する。
私は嫌でも光さんのことを調べる必要があった。
それは、公安でも同じだ。そして向こうの方が優勢であることも。
こうなったら、こちらの手を明かし、向こうの情報を引きだすしか手段はない。
しかし、向こうは私よりも千歩先を読むだろう谷木さんがいる。
一筋縄ではいかないことは、重々承知している。
「柏木、明子さんだけど……、あまり無理をさせるなよ」
どう切り出そうか、あぐねながらそう言うと、柏木が答える前に谷木さんが口を開いた。
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