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「無理をさせるなよ、だってさ、柏木ぃ~。
無理をさせているのはお前の方なんじゃないのか? 泉君?
宝田光には内緒で、こそこそと柏木の彼女連れ出して、一体何をやっているのかな~?」
「ちょ、それはっ! ――つけてたんですか? 一体何のために!?」
「そんなの決まっているだろう? お前が隠れて彼女と会っているからさぁ。
柏木の恋心、わかってやれって! お前、横恋慕は良くないなぁ」
咄嗟に柏木に顔を向けた。柏木は目を泳がせながらも、体は微動だにしていない。
「おい、柏木、誤解するなよ? わかっていると思うけど、そんなんじゃないからな?」
「じゃあ、どうして二人で歩いていたんだろうなぁ? 桜田商店街。
デートじゃないなら、何しにあんなところに行ったのかなぁ~、いずみ?」
谷木さんの目が光った。
私はギリッと奥歯を噛みしめた。
音無さんが勤めている弁護士事務所に行ったことがバレた。
それは、私が光さんの情報を手に入れた、と暗示させるもので……。
谷木さんはどう猛な獣の顔を出し、私に無言の圧力をかける。
『お前が手に入れた情報を差し出せ』と。
ほんっとに、この人ほど厄介な奴はいない。
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