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私は目の前にいる柏木を覗き込んだ。
来週、柏木は真田に会う。そしてファイルについて何か聞きだすつもりだ。
公安の情報を手にするには、見合った情報を差し出さなければならないだろう。
どうする? ロバートについて更なる情報を出すべきか……。
出すならば、どの情報をどのくらい出すべきか……。
「泉……」
柏木は意を決した顔をして呼びかける。
「うん? どうした?」
まだ答えが出ておらず、思いの外柔らかい返事が出た。
「お前、本当に明子さんとはプライぺートで、出かけたんだな?
宝田さんとは関係ないのか?」
柏木の目が鋭くなった。
音無さんの事務所に入ったのを知られた以上、何か情報を提示する必要があるだろう。
けれど、あの日記に関して報告する気は一ミリたりともない。
とはいえ、相手は柏木だし……。ここは正直に話した方がいいだろう、と結論づけた。
「うん。明子さんとは…‥、まぁ。成り行きで……。けど、何もなかった。
悪いけど、お前が知りたいような情報は何もやれないんだ」
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