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「柏木、よーく聞け。
私にとって明子さんは姑だ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。
そうじゃなくても……、明子さんに手を出す勇気は、私には――、ない」
今度は柏木が目を丸くする番だ。
「じゃ、あ……、お前が、二股をかけていた……、という話は嘘なのか?
だって、明子さんと泉って、実はめちゃめちゃ仲がいいし……」
「うーん、まあな……。
確かに明子さんは話しやすいし、頼りになるし、私を理解してくれる貴重な存在だ。
それになんといっても、光さんの大親友でもあるしな」
「本当にそれだけなのか?」
「あぁ。私にとっては、光さんだけが全てだ」
「お前さぁ、よくそんな恥ずかしいセリフ、堂々と言えるな」
少し気まずそうに頬を赤らめる柏木を、優しい気持ちで眺めた。
「だって、本当のことだ。光さんが私の全てなんだ。
柏木、お前、明子さんのことが好きなんだろう?
なら、腹くくってどーんと、ぶつかっていけ。どんな結果になろうと、燻っているより、ずっといい」
柏木は一瞬目を細めた。
それから、はにかんで頷くと「ありがとな」なんて呟く。
「がんばれ、柏木! 当たって砕けろ!」
(あ、砕けちゃマズイよな……)
私は気まずさを誤魔化すように、柏木の肩を2度3度叩いて励ました。
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