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「明子にお願いがあるの」
強い意志を感じる視線を向けるから、私も改まって光を見やった。
「あのね私の家には、私や私の家族に関する書類があるの。
沢村さんは『パンドラの箱』だから知るべきじゃない、って忠告してくれた。
けれど、音無さんは『私も知るべきだ』って。
私自身のことだから、ちゃんと向き合うべきだ、って言うの……」
私は黙って頷いた。
光とは高校からの付き合いだけど、光から家族の話を聞くことは滅多になかった。
出合った時には、すでに今のマンションで一人暮らしをしていて、姉はいるけれど、訳あって別に暮らしている。
両親は光が中学生の時に亡くなった、というくらいしか知らない。
「真実を知ったら、闇に飲み込まれる。って、……ずっと逃げてた。
でも、やっぱり知りたい。
どうして今私がここにいるのか……、私は知るべきなんだと思う」
「うん……」
私は光の話を促すように、相槌だけをうった。
光は小さく息を吐いて、大きく息を吸い込んだ。
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