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☆彡☆彡☆彡
柏木さんとの約束の水曜日、私たちは真田教授ゼミ室の前に立った。
柏木さんが緊張した顔で、私に頷きかける。
私はそれに答え、打ち合わせた内容を頭の中でおさらいした。
まずは、私が真田教授に質問する。そして、柏木さんから本題に入る。
柏木さんが何を聞きたいのかは、知らないけれど……、授業でもない、実習でもない、”生“の聞き込み、もしくは尋問が聞けるなんて――これは貴重な体験だわ!
私はポケットに忍ばせたレコーダーを握り締めた。
「コン、コン」
「失礼します……。真田教授、いらっしゃいますか?」
静かに扉を開けると、途端に古い紙の匂いに包まれる。
目の前は、段ボールが積まれたラックが両側にずらりと並んでおり、その間を進むと、奥に設置されているソファセットが見えて来る。
そこから更に奥に位置している重厚なデスクの向こう側に、真田教授が座っていた。
教授は黙って座っていて、肘をついた両手は顔の前で組まれている。
顔はこちらを向いているけれど、私達を見ているようには思えなかった。
まるで目を開けて寝ているみたい。
「さ、真田教授?」
声を掛けると、わずかに目が動いた。
そして、私と目線が交差する。
なんだろ……。すごく圧倒される。
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