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「いいだろう。FBIファイルは何冊かあるが、お目当てがあるのなら聞こう」
緊張している私がおかしいのか、ふっと息を吐いて、教授は柔らかい口調で尋ねてきた。
それに乗じて、私は先ほどより少し余裕をもって口を開けた。
「できれば、20年前の未解決事件のものを。――日本人ストリッパーが殺害され、犯人は日系アメリカ人であると断定されましたが、未だ捕まっていない、というファイルを見せてください」
そう口にした。
この台詞は、柏木さんから頼まれたもの。
私が20年前の事件なんて知るわけないし、ましてや、そんなファイルを真田教授が持っているなんて、知っているはずもない。
でも、柏木さんがそう言え、って言うんだから、そうなんでしょうよ。きっと。
真田教授は、さすがに驚いた顔をしていた。
顔そのものは無表情なんだけど、わずかに目が大きくなった気がした。
そう思って、よくよく観察してみると、少しだけ頬が引きつっているようにも見える。
これは……、狼狽えているのかしら?
私は黙って教授の様子を観察した。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
教授が静かにそう質問したところで、後ろから柏木さんが声を掛けた。
「教授、僕もその事件のファイルに興味があります。犯罪心理の山田です」
私は無表情を貫いた。けど、心の中じゃ『なに? ここで登場なわけ?』と突っ込みを入れたわよ。
その反面『いよいよ公安捜査っぽくなってきた~』と……、わくわく感を隠すのに必死だった。
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