☆彡 真田教授

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 教授は今度は柏木さんを目を細めて見つめた。  「山田……? 聞かない名前だな……」  バレたじゃない! なに堂々と名乗ってるのよっ! 「すみません。僕は影が薄いんですよ。家庭の事情で大学へはあまり来られず、授業日数もギリギリでして……」  冷や汗が出そうな私の隣で、いけしゃあしゃあとそんな台詞をぬかした。 「そうか……。まあ、単位には気を付けるように……。  しかし、悪いがそんな古いファイルは手元にない。FBI捜査事件で日本人が絡んでいるのならあるが。それでどうだろう?」  半信半疑だろうけど、あくまでも穏やかに真田教授は提案した。 「いえ、あの事件に興味がありまして、犯人の『ロバート・松岡』はその後どうなったんでしょう?  僕が知る限りでは、事件後姿をくらませ、今は日本に潜伏しているんじゃないか……と」 「君は……、何者だ?」  真田教授の顔つきが変わった。  探る様な鋭い視線を柏木さんに向けている。 「ただの学生です。ただ、僕の知り合いに警察関係者がいて、そんな話を耳に挟んだんですよ。  FBI捜査の手から逃げ切ってみせた、日系人に興味を持っただけですよ」  肩をすくめて、あっさり言ってのけた。  それから、興味を無くしたように平坦な声を出す。 「でも教授がご存じないというのなら、案外ロバート松岡はもう死んでしまったのかも知れませんね。では、これで失礼します」  その場で腰を折り踵を返すと、私を促し廊下に出た。
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