40人が本棚に入れています
本棚に追加
「明子さんでも、ビビることってあるんだ?」
少し落ち着いたのか、柏木さんはベンチに座ると私を見て微笑んだ。
「あるに決まってるでしょ。
それより……、どういうこと? 何を調べているの?
大体20年も前の事件を今頃調べてどうするの?」
私が矢継ぎ早に質問をすると、しかめっ面で頭をかいた。
「うーん……、じつは詳しいことは俺も聞かされていないんだ。
ほら、俺、谷木さんの手足だし。
まあ、でもその『ロバート松岡』という人物がFBIで指名手配されたにも拘わらず未だ捕まっていなくて……。
で、その容疑者が、今年の春20年ぶりに『日本にいるらしい』って、噂が出た。
目下、俺はその裏付け捜査をやらされている、というわけ」
「へえ~。今更ね……。でも、なぜ真田教授が出て来るの?
FBIからの捜査依頼なら、捜査ファイルくらいもらえるでしょ?」
「そうなんだよなぁ……。そもそも本当にそんなファイルが存在しているのかどうかも、はっきりしていないんだよ。
まあ、谷木さんが動いているんだから、泉部長からの命令なんだろうけどさぁ」
腕を頭の後ろで組んで、他人事のようにぼやいている姿を眺めながら、私はため息をついた。
で? 私はそんなパシリの柏木さんに、『使われた』ってわけか……。
「まあ、いいわ。気が抜けたら、何だかお腹が空かない?
時間があるなら何か食べましょうよ」
「もちろん!!」
私がそう誘うと、柏木さんは勢いよく飛び上がった。
最初のコメントを投稿しよう!