40人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもね、一人で立ち向かう勇気がないの。
だから、明子にも立ち会って欲しいの。
私、ぐちゃぐちゃになって、明子のこと傷つけるかもしれない……けど!」
瞳を潤ませながら何を言いだすかと、身構えてみれば……ったく。
こんなところは、全然変わらない。
「あのね、何を今更……。
約束したでしょ? 何があっても傍にいるって。
一人で立ち向かわなきゃいけない、なんてことないの!
大丈夫!ぐちゃぐちゃになったら、ちゃんとティッシュで拭いてあげるから」
そう言って、光の手を強く握り締めた。
それは緊張のせいか、小刻みに震えている。
「お~。よしよし……」
私は光の肩を自分の方に引き寄せて、背中を撫でた。
「光は泉さんだけのものじゃないからね~」
そして頬にチュッっと、母親が子供におくるようなキスをした。
「ぎゃっ! あああ、明子……」
あたふたする光にニヤニヤした微笑みを向けながら、戻ってきた日常に感謝した。
最初のコメントを投稿しよう!