40人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのさぁ~、一体何が言いたいの? きちんと説明してくれる?」
柏木さんは苦しげに顔を歪ませた。
それから、額に手を当てて一度目を瞑ってから、息を吐きだした。
「ごめん。俺、焦ってる……。
小西部長も泉も、狭山でさえ、君の過去を知っていて『例の事件』という言い方をする。
俺は、君の事が知りたいんだ。君が許している輪の中に入りたい。
だから、君の口から聞きたい。
事件としてでなく、君の過去として知りたいんだ」
私に向けてくる瞳は真剣そのものだった。
何か、強い意志を感じるほどに……。
「どうして、私から聞きたいの? それに何の意味があるの?」
「お、おれは……、き、きみが……、好きなんだ……」
小さな声だったけど、はっきりとした言葉が私の耳に届いた。
耳まで真っ赤になっている。
そんな姿は可愛いし、好青年って思う。
本当なら、喜ぶ場面なんだろうけど……
最初のコメントを投稿しよう!