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早足でカフェテリアから外に出たとたん、誰かにガシッと手首を捕まれた。
「きゃあぁぁぁ!!」
予想外の事で、思わず悲鳴を上げて振り向くと、息を切らした柏木さんがいた。
「ご、ごめん……。君に言われたことを理解するまで放心しちゃって……。
追いかけるスタートが遅れた……、じゃなくて!」
柏木さんは、握っていた手首をゆっくり離してから
「さっきはごめん!」
そう言って目の前で腰を折り曲げた。
「君の言うとおり、俺は自分の事しか考えてなかった。
明子さんにとっての、特別になりたかったんだ。
君に近づきたかった。
でも、それは、確かに俺の一方的な勝手な思いだった。
君を傷つけた。本当にごめん。
もう無神経に踏み込んだりしない。約束する。
だから、君の望む通り、ただ楽しくお付き合いしたい」
「はあ? ちょ、なにを……」
唖然とする私の手首をまた掴んで、無理やり右手同士で握手させて、ブンブン振る。そして
「今から、俺たちは『気楽な恋人同士』だ。よろしく!」
そう宣言した。
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