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光と別れて家に帰る途中、携帯に着信が入った。着信相手をみると、柏木さんだった。
「はい。なにか用でしょうか?」
何事もなかったように通話に出ると『恋人なんだから、電話してもいいかな、と思って』そんな返事が聞こえた。
「そうね、恋人だものね。それで? 何の用?」
『うん。デートの誘い。
来週、また真田教授のところに行くことになったんだ。
だから、ランチでも……、と思ってね。
明子さんにも情報をあげられるかもしれないしね』
「へぇ~、柏木さんもそういう取引できるようになったんだー」
私は挑発的にそう言った。
柏木さんの伺うような沈黙が何だか重い。
「ランチ、楽しみにしてるわ。何時にカフェテリアに行けばいい?」
『じゃあ、11時に!』
弾むような声につられて、私の声にも笑いがにじむ。
何はともれ、せいぜい楽しませてもらうわよ。
半ばヤケクソな気持ちになりつつ、来週のランチの約束をした。
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