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「お前、明日、この間の弁護士のところに行くんだろう? んで、今度は宝田光も来るんだって?」
「なんで、それ」
言い終わらないうちに更に追いこむように、畳みかける。
「それだけじゃないよな~? 柏木の彼女も、宝田光の保護者代わりの男も来るらしいじゃん。お前の出席は、当然『侵入捜査』ってことでいいんだよな?」
「くっ」
知られてる……。
宝田家の情報を公開するという、私達にしか出まわっていないはずの情報が……。
「誰が、そんなこと」
「教えるわけないだろう? お前だって俺に秘密にしてるんだもん。
なあ、泉、柏木が言ってただろう? 『俺たちは仲間だ』って。
協力しあわなきゃいけないんだぞ~」
猫なで声あげながら、谷木さんは私のすぐ耳元で囁いた。
「ロバートの情報は、全て報告しろ。いいな」
私は咄嗟に顔を上げて、すぐ傍の顔を睨みつけた。
こっちが怯みたくなるくらい凶暴な顔で薄気味悪く微笑んでいる。
この人がこんな顔をしているのを初めて見た。
谷木さんの闇は深い。なぜだかわからないけど、谷木さんと対峙していると時々闇に引きずり込まれそうになる。
「失礼しますっ」
私は逃げるように立ちあがり、後ろの扉に手をかけた。
「いずみ、待ってるよ」
背中に谷木さんの言葉が突きささったけれど、私は言い返すどころか、振り向くことすらできなかった。
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