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「光、行くよ!」
私は重厚な木目の扉についているボタンに指を伸ばした。
―――日曜日
予定通り私たちは駅で落ち合い、商店街を通り、音無さんの事務所にやって来た。
私が下町風の商店街にキョロキョロしながら、やれ夕飯に買って行こうかな、だの、音無さんに差し入れしようか、だの、口調も軽くアゲアゲで話しかけているのに……。
ただ一点を見つめて、いや、それは案外胃にもたれるから、だの、音無さんはそんなものいらんだろ、だの、口調は重く、サゲサゲで返答してくる、このおっさん、もとい、師範はどうにかなんないのかしら……。
流し目で光を見るけど、光も苦笑いを顔に張り付けたまま、ピクリとも反応しない。
もぉ~! なんなのよ! たかだか、書類見るだけでしょ?
処刑台に上がるみたいな顔しちゃって、辛気臭いったらないわっ!!
そんな風に息巻いていた私だったけど、いざ、事務所の前まで来ると……、この二人の緊張感が伝染して、喉が鳴った。
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