謝肉祭

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いつしかバッファロー専門店だけが憩いの場となってしまった。 脳や内臓など、際どい部分も日本人シェフが調理するので食中毒の心配は無いし、仕事の愚痴も聞いてくれる。 帰宅すると一体どこから生えてくるのか、緑色のカビはこんもりと盛り上がるし、黒カビは壁紙を這い登るように次々と斑点を作る。 毎日掃除しているのに何なんだ。 漂白剤とエタノールで手の皮膚はぼろぼろになってしまった。 皮膚が剥がれた部分は真っ赤になり、水が滲みて痛い。 アメリカでは上司と部下が一緒に食事をするという習慣は無い。 一人寂しくオフィスで食事をとる。 家族に連絡しようにも時差の関係で難しい。 日曜には教会でミサが開かれるが、うちは仏教だし、変な勧誘をされたら嫌だなと出席する気にならない。 郵便受けにカーニバルの案内が入っていた。 お祭りくらいは顔を出すかなとぼんやり考える。 結局は裏通りの専門店が一番落ち着く。 すっかり行きつけの店になってしまった。 日曜日に防カビ剤を買って、その後バッファロー料理をいただく。 ライオンですら仕留められない牛が、こんなに柔らかくなるのはシェフの腕が良いからだろう。 家に帰ればカビとの戦い。 毎日掃除をしているのに、カビの浸食が止まらない。 高濃度の薬液を使用しているせいか、頭痛がしてくる。 アスピリンを飲むが、ほとんど効かない。
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