2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
痒みと痛みでほとんど寝られなかった。
不眠のせいか、アクセルを踏む足の感覚がおかしい。
無理をして出勤すると、いつもは機械的な挨拶をするだけの従業員が目を真ん丸にした。
「ボス、その顔!」「ゾンビだ!」
ゾンビとは失礼な。鏡を借りて顔面を確かめる。
心臓が止まりそうになった。
右の鼻がまっ黒く融解し、無くなっている。
「今日は休暇を取る!」
誰も反対しなかった。
保険や医療費など知ったことか。命あってのものだねだ。
急いで車に戻り、アクセルを目いっぱい踏み込む。
恐怖のせいなのか、両足が震えている。
きつい角度のカーブにさしかかる。
ブレーキを踏んで減速しなければ。
左足が動かない。
小刻みに震えているだけだ。
瞬間、世界が一周し、意識が途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!