誰も居ない街で

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キイを回すと、エンジンが大きな音をたてて起動した。 車が脈を打つかのように、車内は振動で揺れている。 アクセルを軽く踏んで前進させ、バックも試してみた。 ハンドルもブレーキも問題なく動く。 完璧、といっていいほど状態が良かった。 車内で長らく放置された菓子類の匂いは別として。 「うん、十分使えそうだ。これは大きいぞ!」 「でしょでしょ?これで安全に地方まで行けるし、そしたら人に会えるかも?!」 「そうだったらいいな、情報や所持品の交換もできるし。」 「何言ってんの、そこから協力して村とか作っちゃおうよ?出来るだけ人をたくさん集めるの!」 「あ、そうか。僕は感覚が麻痺しちゃってんのかな?」 二人で顔を合わせて笑いあった。 このままここで朽ち果てていく恐怖から解放されたせいか、心がグンと軽くなった気がした。 出発前にガソリンスタンドにでも行きたいけど、この辺りにあっただろうか? 街の概形を頭に描いて思索に入ろうとした。 でもその時だ。 入り口からドォオンという、重い音が聞こえてきた。 ミヅキが小さく悲鳴をあげる。 「なんだ?ビルの壁でも崩れたのか?」 「いや、そんな危ない建物はこの辺りにはなかったはずだけど・・・。」 ドォオン! まただ。 これは落下物とかそんな代物じゃない。     
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