誰も居ない街で

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誰も居ない街で

死んでしまった街、と聞いたら何を思い浮かべるだろう。 人のいなくなってしまった街とか インフラの止まった街とか 物流や鉄道網が寸断された街とか想像するんだろうか。 僕たちがいるミト市はそれらの条件を満たしており。 随分と長い間、活動を止めてしまっている。 大通りはゴミが山積していて、撒き散らしている臭いは醜悪なものだ。 人通りは全くなく、道路には多くの破損した車が放置されている。 こんな所にわざわざ商売をしに来る人間なんているはずもなく、長い間搬入のトラックなんて見ていない。 まるで血の巡りが止まった体が、ゆっくりと腐り落ちる様を眺めている気分になる。 かつてこの世界にあったもので今も機能しているものと言えば、政府が発信しているラジオくらいだろう。 それですら毎日決まった時間に放送などはされたりはしない。 たまたまラジオを入れたら運良く聞ける、くらいの頻度だ。 それでも僕は、僕たち二人はこの放送があるから希望を持っていられる。 僕ら以外の 生きている人間に 会えることを。 ほんの一年前にはこんな事になるなんて、考えもしなかったのに、一体地球では何が起こっているんだろう?
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