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友達からの頼まれ事と言うのは、いつも唐突だ。
その日も放課後に突然、美奈子は同じクラスの、絵美と恵に席を囲まれた。
「ねえ、美奈子。お願いがあるの。野球部の今林君、いるでしょう?恵と仲良くしてくれるよう、美奈子から頼んで欲しいの。」
「え?」
「だから、恵は今林君の事が、好きなのよ。」
そんな話は絵美からも、もちろん恵からも、聞いた事がない。
「美奈子、今林君と仲いいじゃない?恵に協力してあげて。」
「うん……」
「私達、友達だもんね。」
「うん。」
「じゃあ、頼んだからね。」
絵美と恵はそう言うと、自分の席へと戻って行った。
内気な自分に、そんな事できないって、分かっているのに、頼んでくるんだから。
美奈子は周りに知られないように、そっと息を吐いた。
チャイムが鳴り、担任の勝村が、教室に入ってきた。
「ホームルーム、始めるぞ~」
その一言で、生徒はおしゃべりを止める。
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