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いつもの教室。
いつもの担任。
いつものクラスメイト。
だが美奈子は、いつもよりも気が重かった。
元々、活発な性格ではなかった。
友達も少なかった。
クラスで話をするのは、さっきの絵美と恵くらいなものだった。
いや。
もう一人いると言っても、いいだろうか、
何かあると、いつも助けに来てくれる。
唯一、男子生徒で話す人。
それが恵が好きだという、今林亮だった。
「最近、日が長くなってきたからって、寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだぞ。」
勝村のいつもの優しい声。
それだけが、気の重い美奈子の心を、落ち着かせていた。
「今日は以上だ。」
「起立、礼。」
「先生、さようなら~」
クラスの女子生徒が、勝村に挨拶をする。
「さようなら。気をつけて帰るんだぞ。」
「先生もね~」
「ありがと。」
勝村は、とりわけモテるようなタイプではなかったが、男子生徒にも、女子生徒にも人気はあった。
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