3 非右

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 わたしには三歳年上の姉がおり、当時わたしが来ていた服はすべて姉のお下がりだ。わたしは子供時代に姉のスカート姿を見たことがない。貧乏な両親の知恵で姉にスカートではなくズボンを履かせたのだと今ではわかるが、当時わたしは姉がスカート姿を見せないことを不思議がる。わたしと違い穏やかな性格の姉が、少なくともわたしのいる場所で両親に文句を言わなかったから、姉が好きでスカートを履かないのだろうと思うようになる。姉に直接スカートのことを聞いたとき、 「お姉ちゃんは、これでいいのよ」  と答えられたことも、わたしがその思いを強めた一因だろう。実際わたしの姉はスポーツ好きで、いつでも活発に身体を動かす。男子に混じって負けないほどに……。そのことも、わたしが思いを強めた要因のはず。穏やかな性格の姉だが、スポーツをやるときにはそれが変わる。端的に言えば攻撃的になるのだ。無論、無用な暴力は振るわない。けれどもサッカーをやれば打つかった相手を押し撥ねる。時には地面に押し倒す。バスケットをするときも同様で果敢に相手と接触し、隙があれば突破する。バレーボールのような相手チームと互いのコートを仕切られたゲームでもディフェンスやアタックに容赦がない。必要ならばネット上に伸び飛んだ相手選手の顔面を叩(はた)き、あるいは相手コート内の選手自身をボールの落下点とする。  勝ち負けのあるスポーツだから相手の弱点(下手な選手)を狙い撃ちにするのは理の当然。けれども中には、それがわからない人間もいる。そういう人々の多くは、 「正々堂々と自分より実力のある選手と戦うのだ」     
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