1 非月

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 もっともスズメの件に関しては、わたしにも一つ落度がある。わたしが握り潰したスズメが、わたしにフンを落としたスズメと同じではなかったかもしれないからだ。スズメの個体識別は難しい。わたしの視力と記憶力は他人のそれより格段に優れていると後に知るが、それでも完全には識別できない。毛色に若干特徴があり、わたし以外にも悪さをした報いか、尾の一部が欠けていたのでまず間違いないと確信する。が、わたしが罠を仕掛け、捉え、潰した後に別の良く似た別個体が現れる。わたしには二羽の区別がつけられない。それほどまでにそっくりだ。が、刑はもう執行済み。時間遡行力がないわたしにはどうすることもできない。だから諦めて貰うしかない。  この件に関し、わたしに言い訳があるとすれば、集団に責任を取って貰ったとなるだろうか。人間ならばクラスの誰かが悪さをしたので別の誰かが仕返しされた、ということだ。
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