2 非雲

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2 非雲

 あの男を初めて見たのは、あたしが高校一年生のとき。おそらく向こうは気づいていない。後にあたしはあの男に攫われるが、それが約一年後。その一年の間に、あの男はあたしのことを調べたのだろう。攫われたときにはフルネームを呼ばれる。最初あたしは自分が知らない……覚えていない親戚の人と勘違いする。目に険はあるが背が高く、一般的なイケメンという第一印象。笑うと見事に険が消える。それであたしが安心する。すると、あの男が、 「図書館まで送ってあげよう」  とあたしを誘う。あたしの行動パターンを見抜いている。あたしがあの日、どんな行動を取ろうとしていたかを……。  あたしには友だちがいない。あの男は、それを知っている。あたしと両親は決定的な仲違いこそしていないが、仲が悪い。おそらくそのことも知っている。小学校の時ほどではないが、未だにあたしがイジメにあっていることまで知っているかどうか。     
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