立ち読み版 二人のラブミルク プロローグ

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   二人のラブミルク           1 「あれ、豊田さんからだ」  駆け出しの電子書籍作家、日乃本一二三(ひのもとひふみ)が、パソコンにむかって小説を書いていた時のことだ。一通のメールが入っていることに気がついた。  前略ごめん下さい。これまで、日乃本先生を担当させていただいておりましたが、このほど「ピュアマガジン出版社」を退職することになりました。これまでの格別のご厚情、心から御礼申し上げます。  後任の編集者は、「鳥居」でございます。  つきましては来月四日、思い出を語り合いながらご挨拶などできればと、ご連絡差し上げた次第です。  場所はいつもどおり、弊社向かいの純喫茶「バンビ」で、時間は午後三時でございます。お呼びだてして申し訳ありませんが、鳥居共々、先生のおいでをお待ち申しております。  なお、現在執筆中の「二人のラブミルク」の原稿をお持ち頂ければ、幸いです。          ピュアマガジン出版社 豊田美子(とよだよしこ) 拝 (退職って……豊田さん、これからどうするつもりなんだろう)  ピュアマガジン出版社の豊田美子は、日乃本の指導・担当をする女性編集者だ。そして「バンビ」は、豊田と何回か打ち合わせで利用した喫茶店だ。  二年前に、女性向け官能小説ライターとしてピュアマガジン出版社からデビューした日乃本。本名は火野本一三(ひのもとかずみ)で、さほど変わり映えしてない。  そのせいというわけでもないだろうが、今日まで小説を三作品を出版するも、どれも売れ行きはぱっとしない。そんな自分には、もったいないほどの律儀な対応だ。  「二人のラブミルク」というのは、新米OLがイケメンリーマンと出会い、性に目覚めていくという官能小説だが、ラブミルクとは、ずばり性器から出る愛液。エロい響きと隠喩な表現が、自分でも気に入っている。 「ありがたいことだ。ご丁寧に……」  日乃本は早速、返信のメールを送った。 続きは電子配信をご覧ください。
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