第1章

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そこは、時が止まった部屋。実家に帰るたびに、私はこの部屋を訪れる。今から12年前、交通事故で逝ってしまった2つ上の兄、純一の部屋を……。 その日は私自身にとっても人生最悪の日であったから良く覚えている。順調だった人生がいきなり暗転するのだから……。 兄の部屋を見渡すと、その当時、良く流行ったアニメーションの美少女キャラクターの人形、いわゆるフィギュアと呼ばれるモノが所狭しと並べられている。 今でも兄の息づかいが聞こえて来そうな雰囲気を醸し出していた。そんな中に箱に入ったフィギュアが1つあった、アノ日の前日、私がこの部屋で兄のマンガを拝借した時、誤って落として壊してしまったモノだ。 「あっ……、残ってたんだ……」 このフィギュアを買った帰り道で、私は目だし帽を被った男達にワンボックスカーで拉致されて、町外れの倉庫でレイプされたのだ。 その当時、15歳だった私にとって凄まじい体験であり、精神は崩壊寸前だったのだが、今でもこうして、曲がりなりにも生きているのは、私の現在の職業である看護師さん達のお陰だろ。 「おーぃ、京子姉ーっ!!、又、兄貴の部屋にいんのか!!」 私を呼んだのは、やはり2つ下の弟、浩二、兄が亡くなった時はまだ中学2年生だった彼は、私の忌まわしい過去などしるよしもなかった。 「京子姉、ご飯が出来たって、お袋が呼んでるぞ」 「はいはい、聞こえてますよ!!、今から行きますよ!!」
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