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「内緒ぉ」
修二をまっすぐに見据え、サンゴは年不相応の淫靡な笑みを浮かべて答える。夕焼けに染まっているからだろうか。その顔は何だか真っ赤に染まって見えた。
「何だよ、教えろよ!」
「しゅぅちゃんがぁチューしてギューしてくるるんならぁ、教えてあげぇ」
「なっ!」
思いがけぬサンゴの要求に、修二は言葉を失ってしまう。やけに近いサンゴから思わず顔を背けて、何を言ってるんだ、と叫びたくなった言葉はしかし別の形で出てきた。
「お前がもっと大人になったらな!」
なぜこんな事を言ったのか、修二自身にも分からなかった。だが、なぜだか否定する言葉は使いたくなかった。
「約束よぉ」
視界の端からちらりと見えたサンゴの顔には、満開の向日葵(ひまわり)のような笑顔が咲いていた。
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