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「修ちゃんいる?」
退屈を打ち破ったのは間延びした真奈美の声であった。障子を開けて顔を出す。腕だけで上半身を起こして修二は向き合った。
「どうしたの?」
「ちょっとこれから学校行かなくちゃ行けないんだけど、用事があるの忘れててさ。お父さんはお店あるし、申し訳ないんだけど、お遣い頼まれてくれない?」
両掌を合わせて真奈美は頼む。大学生は夏休みでも学校に行かないといけないのかと、修二はぼんやりと考えていた。
「別にやっても良いけど、俺この辺よくわかんないよ」
徒歩で行ける範囲でわかるものは精々、公園と個人商店の場所だけである。それより先は、祖父の車で連れて行ってもらう場所しか知らない。
「大丈夫! すぐわかる筈だから! じゃあ、ちょっと待ってて」
言うが早いか、真奈美はどたどたと階段を駆け下りる。修二も立ち上がって階段を覗く。階下から、祖父と真奈美のやり取りが断片的に聞こえる。なんだろう、と思っていると下りた時と同じようにどたどたと真奈美が駆け上ってきた。手には何か箱のようなものを持っている。
「じゃあ、これお願いね!」
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