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学校の正門前に着くと、さっきまでピッタリと俺の横についていた夏鳴は少し距離を空けはじめる。
学校についた瞬間に俺と夏鳴の間には壁のような何かができてしまう。
見えなくて触れられない何か。
教室に入り、そそくさと自席に着く夏鳴を見ていると、俺の元にはぞろぞろと人が群がり始める。
「竜一君、おはよー! 今日の宿題難しかったねー」
「おぉ竜一、はよーっす。いや、マジ蒸し暑くね? 朝からだりぃわー」
宿題は授業を振り返れば何も難しくないし、蒸し暑いのは梅雨時だからだ。
当然と言ってしまえばそれまでのことだが「そうだな」と同意する。
昼休み、夏鳴を昼飯に誘ってみようと席から立ち上がると、クラスの女子が俺の前を塞いだ。
体格が他の女子より小さい夏鳴はすっかり隠れてしまっている。
「ねぇねぇ神木君、一つお願いがあるんだけど」
「何?」
「いやーそのさ、神木君に渡したい物があるっていう子がいてさ。
今、廊下で待っているんだ」
「了解」
なんとなくだが、予想はついている。見知らぬ他クラスの女子が男子に用事があるとしたら内容はかなり絞られるだろう。
「そんじゃ、私は伝えたから。またね~」
伝言係がいなくなり、夏鳴に視線を移すと既にお弁当を広げ食事を進めていた。
また明日にでも誘ってみっかな。
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