4人が本棚に入れています
本棚に追加
それから桑野の喋りは止まらなかった。
なんというかギリギリ不快にならないペースというかそんな感じだ。
喋り慣れている。
三鎌と夏鳴の二人に平等に話を振る桑野の前に、俺は少しの疎外感と焦りを感じていた。
三鎌は無愛想ながら満更でもない様子。夏鳴は緊張している様子であったが、桑野がそれに合わせているせいか安心した表情をしている。
やばい……俺も喋りたいが、完全に桑野のペースだ。
入り込む余地無し。
何かネタがないかとキョロキョロとしていると、八彦が俺の横に座り、曲を予約する機器を差し出してきた。
「ほい、竜一たちも一曲どうよ?」
「ありがとう」
手元が暇なので、歌手検索で自分の好きな歌手の曲を見ていると、夏鳴の顔がちょこんと俺の肩辺りに来る。
「竜一、歌うの?」
「え、あ、いや」
すぐ近くにある夏鳴の顔。ずっと見ていたら吸い込まれそうな瞳に思わず目を逸らしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!