鳴かない蝉

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 今日も一日が終わった。担任からの連絡事項が終わるとクラスメイトがぞろぞろと教室を出て行く。  俺は交際の申し出を断るために荷物を置いて教室を出た。  二つ隣のクラスを覗き、すぐ目に入った人に尋ねる。 「あの、山本さんいる?」 「あぁ、いるよ。山本さーん! 呼ばれてるよ」  声に気付いたのか、山本さんがハッと振り向く。そして俺の存在に気づくと小走りで俺の元に来た。  目を左右に泳がせ、頬を染めているその姿を見ていると、これから伝えようとしている言葉に罪悪感に似たような気持ちが押し寄せてくる。 「取り敢えず、場所変えよっか」 「うん」  こういうものはあまり人がいない場所がいいだろう。少し遠いが屋上へ連れて行くことにした。  普段何気なく歩いている廊下も、こういう時は長く感じてしまうものである。  上履きが廊下に擦れる音がいつもよりハッキリと聞こえる。
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