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屋上へ着くなり、まず周りに人がいないことを確認する。
この屋上に出入りしている人は、そうそういないだろうからまず大丈夫だろう。しかしそんな安心もこれから伝える言葉を考えると一瞬にして消え失せる。
「山本さん、手紙ありがとう」
「うん。その……読んでくれてありがとう」
俺はこの時、気付いてしまった。山本さんの一瞬の表情に。
表情は笑っているが、目の奥底ではどこか諦めているような……そんな感じだ。
俺は言葉を選びながら、慎重に付き合えない理由を話した。山本さんはただ黙って何度も頷きながら俺の話を聞いてくれた。
「それじゃ、俺行くね」
「うん」
いつもより早足で階段を降りて行き、教室へ向かう。こういう日はフードコートでのんびりしたくなってしまう。
家でもなく、学校でもない場所で現実逃避をしたいのだ。
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