第1章「名探偵は童貞卒業を夢見る」

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1  まだ寒さの残る3月の昼下がり。  地元で一番の繁華街、その最寄り駅の改札前で、オレは人を待っていた。 (そろそろ時間だ。今日はどんな子が来るんだろ?)  期待で胸を膨らませる。  今日は待ちに待った紹介デートの日。 『どうしても彼女が欲しい!』とイケメンリア充な幼馴染に頼み込み、何とか取り付けてもらったのだ。  この日のために準備した、自分で考えうる限りのモテコーデで身を固めてきた。  あとは相手の女の子が来るのを待つだけ……。  お、来た! 改札口の向こうから手を振る女の子の姿が! 「初めまして、ミナでーす!」 「は……初めまして、貞虎です」  そんな挨拶を交わした彼女は……うぉおっ! めっちゃカワイイ!  こんな可愛い娘を紹介してくれるなんて、ありがとう申一郎!  ――ってアレ? だけど……。 「それじゃ行こっか?」 「待ってミナさん」  街の方へ歩き出そうとする彼女を引き留め、気付いたことを尋ねる。 「ねぇキミって……カレシいるよね?」 「なっ……何の事?」 「だってほら、それってペアのネックレスだよね?」  半分に割れたハートの形。おそらくその半分は、恋人が持っているのだろう。 「ま……前のカレシに貰ったのを間違ってつけてきちゃったみたい。でももうとっくに別れてるから……」 「いやいや、間違っても他の男とのデートにつけてくるものじゃないでしょソレ。言い訳として苦しいよさすがに」  あっ、やばい。 「オレの推理を言うと――」  オレの口が勝手に回りだす。  これは自分でも止められないパターンだ……。 「キミは今のカレに倦怠感を感じていたんじゃないかな?  それで気分を変えたいと、今日は遊びのつもりで紹介デートに来た。  とはいえ本気でカレを裏切るつもりはないんじゃいの?  だからカレとの絆であるペアのアクセを身に着けてきたんだろ?   それがあれば気持ちに歯止めがかかるだろうからね。  つまりキミは……」  そこまでしゃべり続けてはたと気づく。  ……ミナさんめっちゃ睨んでる。 「もういい、私帰る」 「あっ! ちょっと……」  今日の紹介デートは、またしても失敗のようだ……。
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