第1章「名探偵は童貞卒業を夢見る」

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* 「貞虎……お前バカなの?」  翌日、オレの部屋――。  ミナさんを紹介してくれた幼馴染に昨日の報告をしていたのだが……。  普段は温厚な親友、風間申一郎(かざましんいちろう)の珍しく怒った姿がそこにはあった。  理由は当然、昨日の紹介デート。  ミナさんを紹介した申一郎からすれば、恩を仇で返された気持ちなんだろう。  オレのベッドに深々と座り、腕組みをしてオレを見下ろす申一郎。  オレはと言えば、その前で肩を狭めて反省の正座中だ。  フローリングの床が痛い……。 「……すんませんっした!」  そう言って正座したまま深々と頭を下げる。いわゆる土下座という状態だ。  格好悪いが、ミナさんが怒って帰ってしまうような事をしでかしたオレが悪い。  甘んじて受け入れて、申一郎の気が済むまで謝るしかない。 「余計な事言ったら嫌われるって、お前はまだ分からないの?」 「分かってはいるんだけど、カレシがいるんじゃないかって気づいちゃったらつい……」  あれはオレの悪い癖……。  何かが気になるとすぐ推理してしまい、それを話し出すと止まらなくなってしまう……。  でも本当にワザとじゃないんだ! 「もう二度とこんな失敗はしない! だから……頼む申一郎! もう一度チャンスを!」 「ふざけるな! そのセリフ何度目だよ? お前さ、今まで何人の女を紹介したか覚えてるか?」 「え……えっと……?」  言いよどむオレを見て、申一郎は「はぁ」とため息をつく。 「――1人目、カンナちゃん。  デート中、ダイエットのためランチでサラダだけを注文。  その時貞虎から『オレの推理だと、キミいつもは大食いでしょ? 小食アピールなんてやめなよ』と暴言を吐かれる」 「うっ……」 「――2人目、ヨーコちゃん。  一見アニメグッズとはわからないようなキーホルダーをバッグにつけていたところ、貞虎から『もしかしてキミって腐女子?』と大声で暴露される」 「そ、それは……」 「――3人目、ユキちゃん。  重い日だけど約束だからとデートに行くも、『キミ今日生理でしょ? 無理しないでいいよ』と周囲の目も憚らずに言い散らかす」 「……」 「そして今回のミナちゃんで4人目なんだけど……」  淡々と指摘してくる申一郎。  おかげで自分の行動を客観的に見ることができた。  ……うん、我ながらなかなかのダメ人間だ。
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