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「ぎゃああああ――!」
オレは羞恥に耐え切れず、自分の部屋をゴロゴロと転げまわる。
「小学生の頃のオレのバカぁっ!」
それは『童貞探偵』がこの世に誕生した忌まわしき日。
まさに黒歴史、思い出すだけで嫌な汗が止まらない。
「お前のせいだぞ申一郎! お前があんなことを言い出してから、オレはずっと『童貞探偵』なんてあだ名で呼ばれてきたんじゃないか!」
「確かに言い出したのはオレだけどさ……。それを広めたのは貞虎自身じゃないか」
文句を言うオレにさらっと正論を返す申一郎。
「うっ、それを言われると……」
ちくしょう、あの頃のアホだった自分をどつき回したい!
「と……ともかく! お前も見てきただろ? あれ以来オレがどんなイジられ方をしてきたか。もうあんなのは嫌なんだよ」
あの日以来、オレは『童貞探偵』なんていう頭の悪いあだ名でイジられ続けてきた。
まだ小学校中学年くらいまでは良かったんだ。
オレだけでなく周りも童貞の意味を、具体的にはよく分かっていなかったし、イジリ方も『童貞探偵消しゴム貸して~』とか『童貞探偵サッカーしようぜ』とか、まだ可愛げがあった。
だが小学校高学年辺りからイジリ方がキツくなり、中学に上がれば『やめろよ童貞探偵、童貞がうつるだろ』とか『童貞卒業は諦めてホモ探偵になれよ』とか、中には『オレ、カノジョとヤッちゃったぜ、羨ましいか童貞探偵!』なんて報告してくる奴まで出てきて、まさに地獄のような毎日だった。
『童貞探偵』は唾棄すべき過去であり人生最大の汚点。
オレは考えた、どうすればこれを克服できるのか。
その結果オレは――
『童貞』と『探偵』の両方を卒業しないと『童貞探偵』は克服できないのでは?
――という結論に達したのだ。
その気持ちを申一郎に切々と訴える。
「中学に上がるとき、オレはもう二度と『探偵』はやらないと決意した。次は『童貞』の番だ。図らずもオレたちはもうすぐ高校生になる。オレはこの高校進学を機に、残る『童貞』の方も卒業したいんだよ!」
それを成し遂げてこそオレは、晴れて『童貞探偵』という悪夢から解放されるんだ!
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